市場販売目的のソフトウェアの減価償却計算は、そのソフトウェアの償却の性格に応じて最も合理的と考えられる償却方法により、その取得原価を償却します。市場販売目的のソフトウェアについては見込販売数量に基づく償却方法のほか、見込販売収益に基づく方法も合理的な方法として考えられています(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 第18項参照)。
ここでは見込み販売収益に基づく償却方法について具体的な計算例をあげながらご説明いたします(見込販売数量に基づく償却方法については市場販売目的のソフトウェアの減価償却費計算の基礎をご参照ください)。
見込販売収益に基づく償却計算は、ソフトウェアの前期末の未償却の残高を、当該ソフトウェアの当期の販売収益の実績と翌期以降の見込み販売収益の合計額に対する当期の実際の販売収益の割合を乗じ、当期の償却額を算定することになります。
前期末未償却残高×当期実績販売収益/(当期販売収益+翌期以降の見込販売収益) |
なお、毎期の償却額は残存有効期間に基づく均等配分額を下回らないようにしなければなりません(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 第18項参照)。
またソフトウェアの未償却残高が翌期以降の見込み販売収益の額を上回る場合には当該超過額をその期における費用または損失として処理する必要があります(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 第20項参照)。
これらの算式をまとめると以下のようになります。
1.前期末未償却残高×当期実績販売収益/(当期販売収益+翌期以降の見込販売収益) 2.前期末における未償却残高÷残存有効期間 3.上記のうちいずれか大きい金額 |
※上記算式によって算定されたソフトウェアの未償却残高が翌期以降の見込み販売収益の額を上回る場合には当該超過額をその期における費用または損失として処理する必要があります。
期末時点における見込販売数量(見込み販売収益)については毎期見直しを行い、見直し後の数量(金額)を基に償却費を算定する必要があります。
有効残存期間は原則として3年とし、3年を超える年数とするときには合理的な根拠に基づくことが必要となります(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 第18項参照)。
演習問題:見込販売収益に基づく市場販売目的のソフトウェアの減価償却費の算定
x1年度及びx2年度における下記条件のソフトウェア(市場販売目的)について、減価償却費の金額を算定しなさい。
(条件)
1.無形固定資産として計上されたソフトウェアの制作費は3,000,000円である
2.当該ソフトウェアの見込み有効期間は3年である。
3.当該ソフトウェアの見込販売収益は以下の通りである(当初の見込販売数量と販売実績とは一致するものとする)。
見込販売収益 | |
x1年度 | 6,000,000円 |
x2年度 | 3,000,000円 |
x3年度 | 6,000,000円 |
x1年度における減価償却費の計算
1.見込販売収益に基づく償却額の算定 2.残存有効期間による均等償却額の算定 3.見込販売数量に基づく償却額と残存有効期間による均等償却額との比較 したがって、×1年度におけるソフトウェアの償却額は1,200,000円となります。 なお、未償却残高は1,800,000円は翌期以降の見込販売収益9,000,000円を下回っている。 |
x2年度における減価償却費の計算
1.見込販売収益に基づく償却額の算定 2.残存有効期間による均等償却額の算定 3.見込販売収益に基づく償却額と残存有効期間による均等償却額との比較 したがって、×2年度におけるソフトウェアの償却額は900,000円となります。
なお、未償却残高は900,000円は翌期以降の見込販売収益12,000,000円を下回っている。 |
×2年度における残存有効期間に基づく均等配分額については、ソフトウェアの前期末時点おける未償却残高を、残りの有効期間の年数で除して算定します。
前期末現在(期首現在)における未償却残高は、ソフトウェアの取得原価3,000,000円から、前期までの既償却額の合計1,200,000円を差し引いて算定します。
これを有効年数の残り(有効年数3年のうちすでに1年過ぎていますので、3年-1年=2年)で除して残存有効期間に基づく均等配額を算定します。