無形固資産として計上したソフトウェアの取得原価は、当該ソフトウェアの性格に応じて、見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法により償却することが求められます(研究開発費等に係る会計基準 第四項5参照)。
市場販売目的のソフトウェアに関しても、そのソフトウェアの償却の性格に応じて最も合理的と考えられる償却方法により、その取得原価を償却します。市場販売目的のソフトウェアについては見込販売数量に基づく償却方法のほか、見込販売収益に基づく方法も合理的な方法として考えられます。
なお、毎期の償却額は残存有効期間に基づく均等配分額を下回らないようにしなければなりません(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 第18項参照)。
またソフトウェアの未償却残高が翌期以降の見込み販売収益の額を上回る場合には当該超過額をその期における費用または損失として処理する必要があります(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 第20項参照)。
市場販売目的のソフトウェアの減価償却費は以下の算式を基に算定することになります。
前期末未償却残高×当期実績販売数量/(当期実績販売数量+翌期以降の見込販売数量) 上記の算式で算定した金額が、以下の残存有効期間に基づく均等配分額を下回る場合には、下記の算式による残存有効期間に基づく均等配分額を償却費とします。 前期末における未償却残高÷残存有効期間 |
前期末未償却残高×当期実績販売収益/(当期販売収益+翌期以降の見込販売収益) 上記の算式で算定した金額が、以下の残存有効期間に基づく均等配分額を下回る場合には、下記の算式による残存有効期間に基づく均等配分額を償却費とします。 前期末における未償却残高÷残存有効期間 |
※上記算式によって算定されたソフトウェアの未償却残高が翌期以降の見込み販売収益の額を上回る場合には当該超過額をその期における費用または損失として処理する必要があります。
期末時点における見込販売数量(見込み販売収益)については毎期見直しを行い、見直し後の数量(金額)を基に償却費を算定する必要があります。
有効残存期間は原則として3年とし、3年を超える年数とするときには合理的な根拠に基づくことが必要となります(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 第18項参照)。
演習問題:市場販売目的のソフトウェアの減価償却費の算定
x1年度及びx2年度における下記条件のソフトウェア(市場販売目的)について各期に計上する減価償却費を算定しなさい。
(条件)
1.無形固定資産として計上されたソフトウェアの制作費は3,000,000円である
2.当該ソフトウェアの見込み有効期間は3年である。
3.当該ソフトウェアの見込販売数量は以下の通りである(当初の見込販売数量と販売実績とは一致するものとする)。
見込販売数量 | |
x1年度 | 1,200個 |
x2年度 | 600個 |
x3年度 | 1,200個 |
各期における未償却残高については翌期以降の見込み販売収益を上回ることはないものとする。
x1年度における減価償却費の計算
1.見込販売数量に基づく償却額の算定 2.残存有効期間による均等償却額の算定 3.見込販売数量に基づく償却額と残存有効期間による均等償却額との比較 したがって、×1年度におけるソフトウェアの償却額は1,200,000円となります。 |
x2年度における減価償却費の計算
1.見込販売数量に基づく償却額の算定 2.残存有効期間による均等償却額の算定 3.見込販売数量に基づく償却額と残存有効期間による均等償却額との比較 したがって、×2年度におけるソフトウェアの償却額は900,000円となります。
|
×2年度における残存有効期間に基づく均等配分額については、ソフトウェアの前期末時点おける未償却残高を、残りの有効期間の年数で除して算定します。
前期末現在(期首現在)における未償却残高は、ソフトウェアの取得原価3,000,000円から、前期までの既償却額の合計1,200,000円を差し引いて算定します。
これを有効年数の残り(有効年数3年のうちすでに1年過ぎていますので、3年-1年=2年)で除して残存有効期間に基づく均等配分額を算定します。
(関連ページ)
見込販売収益に基づく償却費の計算(ソフトウェア)
ソフトウェアの減価償却費計算の基礎(見込販売数量の変更)
自社で利用するソフトウェアに関する仕訳・記帳