ソフトウェアの減価償却費計算の基礎(見込販売数量の変更)

市場販売目的のソフトウェアの減価償却費の計算については、見込販売数量または見込販売収益に基づく償却方法により算定することになりますが、この減価償却費算定の根拠となる見込販売数量や見込み販売収益については適宜見直を行うことが必要となります。

見直しの結果、販売開始時において見積もった見込販売数量や総見込販売収益を変更した場合、見直し以後の減価償却費の計算は見直し後の見込販売数量または見込販売収益に基づいて算定することになります(なお、過去に見積もった見込販売数量や見込販売収益がその過去の時点での合理的な見積りに基づくものではなかったため、これを事後的に合理的な見積りに基づいたものに変更する場合には、会計上の見積りの変更ではなく過去の誤謬の訂正に該当することになります。研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 第19項参照)。

前事業年度末において、翌期以降の見込販売数量の見直しを行った結果、見込販売数量の変更を行った場合における見直し後の事業年度の減価償却費の計算は次のようになります

(見込販売数量変更以後の償却方法)

前期末未償却残高×当期実績販売数量/(当期実績販売数量+変更後の当事業年度末における見込販売数量)

上記の算式で算定した金額が、残存有効期間に基づく均等配分額を下回る場合には、残存有効期間に基づく均等配分額を償却費とします。
また、上記算式によって算定されたソフトウェアの未償却残高が翌期以降の見込み販売収益の額を上回る場合には当該超過額をその期における費用または損失として処理する必要があります。

以下、具体的な数値を使って説明いたします。

演習問題:市場販売目的のソフトウェアの減価償却費の算定

x1年度及びx2年度における下記条件のソフトウェア(市場販売目的)について計上すべき減価償却費の金額を示しなさい。

(条件)
1.無形固定資産として計上されたソフトウェアの制作費は3,000,000円である
2.当該ソフトウェアの見込み有効期間は3年である。
3.当該ソフトウェアの見込販売数量は以下の通りである。

(当該ソフトウェアの見込販売数量)
見込販売数量
x1年度 1,200個
x2年度 600個
x3年度 1,200個

販売初年度は見込みどおりに販売されたが、初年度末において2年度以降の見込販売数量を下表のとおり減少することとした。

(当該ソフトウェアの見込販売数量)
見込販売数量
x1年度 1,200個
x2年度 500個
x3年度 800個

各期における未償却残高については翌期以降の見込み販売収益を上回ることはないものとする。また、過去に見積った見込販売数量はその時点での合理的な見積りに基づくものであったとする。

x1年度における減価償却費の計算
(計算過程)

1.見込販売数量に基づく償却額の算定
取得原価3,000,000円×1,200個/(1,200個+600個+1,200個)=1,200,000円

2.残存有効期間による均等償却額の算定
3,000,000円×1/3年=1,000,000円

3.見込販売数量に基づく償却額と残存有効期間による均等償却額との比較
1,200,000円 > 1,000,000円

したがって、×1年度におけるソフトウェアの償却額は1,200,000円となります。

×1年度末に見込販売数量の変更を行っていますが、変更後の見込販売数量を使って償却費の計算をするのは、変更以後の年度となりますので×2年度より変更後の見込販売数量を使って計算します。したがって×1年度の計算は販売前の見込み販売数量を使って計算します)。

x2年度における減価償却費の計算
(計算過程)

1.見込販売数量に基づく償却額の算定
取得原価(3,000,000円-1,200,000円)×500個/(500個+800個)=692,308円

2.残存有効期間による均等償却額の算定
(3,000,000円-1,200,000円)×1/2年=900,000円

3.見込販売数量に基づく償却額と残存有効期間による均等償却額との比較
692,308円 < 900,000円

したがって、×2年度におけるソフトウェアの償却額は900,000円となります。

×1年度末に見込販売数量の変更を行っておりますので、×2年度以降は変更後の見込み販売数量を基に償却費を算定します(仮に見積もりの変更が×2年度期首であっても×1年度末と実質的と同時期と考えられますので同様に計算します)
×2年度における残存有効期間に基づく均等配分額については、ソフトウェアの前期末時点おける未償却残高を、残りの有効期間の年数で除して算定します。
前期末現在(期首現在)における未償却残高は、ソフトウェアの取得原価3,000,000円から、前期までの既償却額の合計1,200,000円を差し引いて算定します。

これを有効年数の残り(有効年数3年のうちすでに1年過ぎていますので、3年-1年=2年)で除して残存有効期間に基づく均等配分額を算定します。

(関連ページ)
市場販売目的のソフトウェアの減価償却費計算の基礎

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