売掛金や受取手形、貸付金などの金銭債権については、決算時においての将来発生するであろう貸倒額を見積り、これを『貸倒引当金』勘定を使って貸方に記帳すると同時に、借方には『貸倒引当金繰入』という費用勘定を使って記帳することになります。
この時、前期に設定した貸倒引当金の残高が当期末において、未だに使用されずに残っている場合は差額補充法によって貸倒引当金を設定することになります。
差額補充法とは、前期に計上された貸倒引当金の残高と、当期において計上すべきである貸倒引当金の金額との差額を算定し、当期に計上すべき金額の方が大きい場合はその差額を『貸倒引当金繰入』勘定を使って費用として処理し、前期に計上された貸倒引当金の残高の方が大きいときは『貸倒引当金戻入』勘定という収益勘定を使って貸倒引当金の減額処理を行う方法です。
たとえば、前期に計上された貸倒引当金の当期末残高が1,000円、当期の決算時において計上すべきである貸倒引当金の金額が1,200円の場合、差額200円について以下のように記帳します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 200 | 貸倒引当金 | 200 |
いっぽう、前期に計上された貸倒引当金の当期末残高が1,000円、当期の決算時において計上すべきである貸倒引当金の金額が800円の場合、差額200円について以下のように記帳します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 200 | 貸倒引当金戻入 | 200 |
演習問題:貸倒引当金の設定(差額補充法)
決算時において売掛金の期末残高100,000円に対し、5%の貸倒引当金を設定した。なお期末における貸倒引当金残高は300円である。
(計算過程)
貸倒引当金の期末残高がある場合における決算時の処理は、会計上は差額補充法を使用します。当決算期に計上すべき貸倒引当金の金額と前期に設定した貸倒引当金の当期末残高とを比較し、その差額について、前者の方が大きい場合は『貸倒引当金繰入』勘定を使って追加で貸倒引当金を計上し、後者の方が大きい場合は『貸倒引当金戻入』勘定を使って、差額分を減額します。
貸倒引当金計上額:売掛金100,000円×5%=500円
貸倒引当金の追加計上額:500円-300円=200円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 200 | 貸倒引当金 | 200 |
上記の仕訳により、貸倒引当金の決算整理後の残高は前期末残高300円と当期追加計上分200円の合計である500円となります。
当期の期末債権に対する貸倒引当金設定額より、前期に設定した貸倒引当金の当期末残高の方が大きい場合は差額について『貸倒引当金戻入』勘定をつかって、貸倒引当金を減額します。