所有権移転ファインナンスリース取引の借手側の開始時の仕訳

ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います(売買処理)。
借手の行ったリース取引が所有権移転ファイナンス・リース取引と判定された場合には、リース取引開始日において、リース物件とこれに係る債務を、リース資産及びリース債務として計上することになります(リース取引に関する会計基準第9項、リース取引に関する会計基準の適用指針第36項参照)。

(所有権移転ファイナンス・リース取引開始時の処理)
借方 金額 貸方 金額
リース資産 リース債務

この時、リース資産及びリース債務の計上額(借手にとってのリース物件の取得価額)の算定については、借手側において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らか否かによって以下のように算定することになります(リース取引に関する会計基準の適用指針第37・22・17項参照)。

(1) 借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、貸手の購入価額等。

(2) 貸手の購入価額等が明らかでない場合は、リース料総額の割引現在価値と借手にとっての見積現金購入価額とのいずれか低い額。

所有権移転ファイナンス・リース取引の場合のリース資産計上額の算定においては、借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、貸手の購入価額等をそのままリース資産計上額として使用します。この場合リース料総額の割引現在価値との比較は行いません(所有権移転外ファイナンス・リース取引の資産計上額との違いもご確認ください)。

なお、上記の割引現在価値の算定のために用いる割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率とし、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率を使用することになります。
また、割安購入選択権がある場合には、リース料総額にその行使価額を含めることになります(リース取引に関する会計基準の適用指針第37項(2)参照)。

演習問題:所有権移転ファイナンス・リース取引開始時の処理(借手側)

当社がAリース会社より×1年4月1日より機械のリースを受ける契約を締結した。当該リース取引の条件は以下の通りである。リース取引開始時の仕訳を示しなさい。

(リース取引の条件)
1.当該リース取引は所有権移転ファイナンス・リース取引である。
2.リース期間終了時に借手はリース資産を割安価額12,000円で購入できる選択権が付与されている(割安購入選択権)
3.リース期間:4年
4.借手の見積現金購入価額300,000円(貸手のリース物件の購入価額は不明)
5.リース料:毎年3月31日に80,000円を支払う(リース料総額は320,000円)
6.借手の追加借入利子率 年5%(貸手の計算利子率は不明)

(解答)
当該リース取引は所有権移転ファイナンス・リース取引に該当しますので、会計処理は売買処理を行います。したがって借手はリース取引開始時にリース物件を資産計上し、リース債務を認識することになります。

リース物件の資産計上額については、貸手のリース物件の購入価額が不明であること、および貸手の計算利子率が不明であること、また借手には割安購入選択権が付与されていることから、以下の金額のうちいずれか低い金額となります。

リース料総額の割引現在価値:80,000円/(1+0.05)+80,000円/(1+0.05)^2年+80,000円/(1+0.05)^3年+(80,000円+12,000円)/(1+0.05)^4年=293,548円

借手の見積現金購入価額300,000円

リース料総額の割引現在価値の方が借手の見積現金購入価額より低い金額であるため、リース物件の資産計上額は293,548円

借方 金額 貸方 金額
リース資産 293,548 リース債務 293,548

(関連ページ)
所有権移転外ファインナンスリース取引開始時の仕訳(借手側)
所有権移転ファインナンスリース取引の減価償却費の計算と仕訳

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