商品など、通常の販売目的で保有する棚卸資産については取得原価をもって貸借対照表価額としますが、期末における正味売却価額(いわゆる時価)が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることが必要となります。
これは収益性が低下している場合における帳簿価額の切下げ(または低価法など)といい、取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように、過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる処理をいいます。
この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用(商品評価損)として処理することになります(棚卸資産の評価に関する会計基準 第7項・第36項等参照)。
商品評価損=(取得原価-正味売却価額)×在庫数量 |
上記の取得原価は先入先出法や平均原価法など、それぞれの方法により記帳された期末商品の取得原価をいいます。
商品評価損が発生した場合の仕訳は、その発生額を『商品評価損』などの勘定科目を使って発生時の費用として処理すると同時に『繰越商品』勘定を減額し、貸借対照表に計上される資産としての商品を減少させます。また損益計算書上は、原則として売上原価の内訳科目として表示しますが、その発生が臨時の事象(災害や重要なリストラクチャリングなど)に起因し、かつ、多額であるときには、特別損失に計上することになります(棚卸資産の評価に関する会計基準 第17項参照)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
商品評価損 | 繰越商品 |
演習問題:商品評価損の基礎
以下の期末商品に関するデータをもとに、商品評価損の金額を算定し、商品評価損を計上するための仕訳を示しなさい(商品評価損の計上以外の決算整理仕訳は行わなくてよいものとする)。
帳簿有高:40個(取得原価は@1,000円)
実際残高40個(棚卸の際に一部の商品に品質が低下が発見された。品質の低下が見られた商品の数は10個であり、その商品の正味売却価額は@600円であった) |
(計算過程)
一部の商品に品質の低下に伴う収益性の低下がみられたため、帳簿価額を正味売却価額まで引き下げるための処理を行います(低価法)。
品質の低下の見られた商品は10個であり、その正味売却価額は@600円であるため、引き下げ額(商品評価損)は以下のように算定します。
商品評価損:(帳簿価額@1,000円-正味売却価額600円)×商品数量10個=4,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
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商品評価損 | 4,000 | 繰越商品 | 4,000 |
(関連ページ)
商品評価損の表示の基礎(売上原価または特別損失)