退職給付費用の内訳(勤務費用と利息費用の基礎概念)

各期の期首から期末にかけて増加した退職給付債務の増加額については、これを増加した年度の費用(退職給付費用)として処理します。
なおこの1年間に増加した退職給付債務は以下の勤務費用と利息費用と呼ばれるものに分けることができます(退職給付に関する会計基準 第8・9・17・21項等参照)。

勤務費用 勤務費用とは、1 期間の労働の対価として発生したと認められる退職給付をいいます。

勤務費用は退職給付見込額のうち当期に発生したと認められる額を割り引いて算定します。

利息費用 利息費用とは、割引計算により算定された期首時点における退職給付債務について、期末までの時の経過により発生する計算上の利息をいいます。

利息費用は、期首の退職給付債務に割引率を乗じて計算します。

退職給付債務は割引計算によって算定されますので、勤務費用は当期に発生したと認められる額を退職時から当期末までの期間で割引いて算定します。
利息費用は期首における退職給付債務について当期に発生した計算上の利息を意味しますので、当期期首時点(または前期末時点)における退職給付債務に割引率を乗じることによって算定します。

言葉だけでは難しいですので、実際の数値を使って勤務費用と利息費用の計算例をみていきましょう。

勤務費用と利息費用との基本的な計算例

ある従業員Aの全勤務期間を5年(当期末までに3年経過)、退職時に支給される退職時一時金の見込額を100,000円(これは勤務期間を通して毎期同額ずつ発生するものとする)、割引率を5%とした場合において、当該従業員Aの当期の退職給付に関する勤務費用と利息費用をそれぞれ算定しなさい。

(計算過程)

1.勤務費用の計算
当期に発生した退職給付の見込額:100,000円×1年/5年=20,000円
当期末から退職時までの期間:5年-3年=2年

したがって、勤務費用は20,000円/(1+0.05)^2年=18,140円

2.利息費用の計算
当期首までに発生した退職給付の見込額:100,000円×2年/5年=40,000円
当期首から退職時までの期間:5年-2年=3年
当期首の退職給付債務:40,000円/(1+0.05)^3年=34,554円

したがって、利息費用は34,554円×0.05=1,728円

なお各期末における退職給付債務は以下のようになります。

×1年
16,454円
×2年
34,554円
×3年
54,422円
×4年
76,190円
×5年
100,000円

×2年末から×3年末までの1年間における退職給付債務の増加額は19,868円となっており、これが×3年に計上すべき退職給付費用となります。
この金額は先ほど計算した勤務費用18,140円と利息費用1,728円の合計と一致していることをご確認ください。
なお、この退職給付費用を計上する際の仕訳は以下の通りです。

借方 金額 貸方 金額
退職給付費用 19,868 退職給付引当金 19,868

(関連ページ)
退職給付債務の算定の基本的な流れ
退職給付費用の算定(勤務費用・利息費用・期待運用収益)

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