各期の期首から期末にかけて増加した退職給付債務の額(その内訳は勤務費用と利息費用とに分けることができます)については、これを増加した年度の費用(退職給付費用)として処理します。
いっぽう、年金資産の運用により生じると合理的に期待される計算上の収益(期待運用収益)については、企業が負担すべき将来の退職給付を減額する効果がありますので、その金額だけ退職給付費用(退職給付引当金の増加額)を減額して処理することになります。
したがって、期末において計上すべき退職給付費用(退職給付引当金の増加額)は以下の算式で求めることができます。
退職給付費用計上額=勤務費用+利息費用-期待運用収益 |
※ 過去勤務債務や数理計算上の差異などは考慮していません。
退職給付費用・退職給付引当金の基本的な計算例
ある従業員Aの全勤務期間を5年(当期末までに3年経過)、退職時に支給される退職時一時金の見込額を100,000円(これは勤務期間を通して毎期同額ずつ発生するものとする)、割引率を5%とした場合において、当該従業員Aの当期末における退職給付に関する仕訳を示しなさい。
なお、期首時点における年金資産の価格は20,000円であり、長期期待運用収益率は3%であるものとして算定すること。
(計算過程)
1.勤務費用の計算
当期に発生した退職給付の見込額:100,000円×1年/5年=20,000円
当期末から退職時までの期間:5年-3年=2年
したがって、勤務費用は20,000円/(1+0.05)^2年=18,140円
2.利息費用の計算
当期首までに発生した退職給付の見込額:100,000円×2年/5年=40,000円
当期首から退職時までの期間:5年-2年=3年
当期首の退職給付債務:40,000円/(1+0.05)^3年=34,554円
したがって、利息費用は34,554円×0.05=1,728円
3.期待運用収益の計算
当期の期待運用収益:期首の年金資産の額20,000円×長期期待運用収益率3%=1,200円
上記1から3より、当期末に計上すべき退職給付費用(退職給付引当金の増加額)は以下の通りとなります
退職給付費用:勤務費用18,140円+利息費用1,728円-期待運用収益1,200円=18,668円
この退職給付費用を計上する際の仕訳は以下の通りです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
退職給付費用 | 18,668 | 退職給付引当金 | 18,668 |
(関連ページ)
退職給付債務の算定の基本的な流れ