期待運用収益の仕訳・記帳

企業は将来の退職給付の支払に備えて、外部に資金を拠出し、これを積み立てる場合があります。これを退職給付会計においては年金資産といいます。

この年金資産は外部で運用されることにより毎年少しずつ増加します。退職給付会計においては、この年金資産の運用により生じると合理的に期待される計算上の収益を期待運用収益といいます(退職給付に関する会計基準 第10項参照)。
期待運用収益は期首の年金資産の金額に合理的に期待される収益率(長期期待運用収益率)を乗じて計算することになります(退職給付に関する会計基準 第22・23項参照)。

期待運用収益=期首の年金資産の額×長期期待運用収益率

期待運用収益の計上は年金資産の増加、ひいては将来企業が支給する退職給付の減少を意味しますので、期待運用収益の金額だけ企業が認識すべき退職給付引当金は減少することになります(相手勘定は退職給付費用のマイナスとして処理します)。

借方 金額 貸方 金額
退職給付引当金 退職給付費用

演習問題:期待運用収益の計算と仕訳

期首の年金資産の金額が10,000円、長期期待運用収益率は2%であった場合における当期の期待運用収益の金額を計算し、退職給付について必要な仕訳を示しなさい(なお当期の勤務費用と利息費用の合計は1,000円であり、それ以外の要素は考慮しないものとする)

(解答)

1.期待運用収益の計算

期待運用収益は期首の年金資産の金額に長期期待運用収益率を乗じて算定しますので、その算定は以下のようになります。

期待運用収益:期首の年金資産10,000円×期待運用収益率2%=200円

2.期待運用収益の仕訳

勤務費用と利息費用の合計1,000円は退職給付引当金を増加させるのに対し、期待運用収益200円は退職給付引当金を減少させます。
したがって両者の差額800円だけ退職給付引当金を増加させることになります。

借方 金額 貸方 金額
退職給付費用 800 退職給付引当金 800

(関連ページ)
退職給付費用の内訳(勤務費用と利息費用の基礎概念)
退職給付費用の算定(勤務費用・利息費用・期待運用収益)

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