過去勤務費用の基礎(退職給付会計)

過去勤務費用(過去勤務債務)とは、退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分をいい、退職金規程等の改訂に伴い退職給付水準が変更された結果生じる、改正前後の退職給付債務の差額をいいます(退職給付に関する会計基準第25項 退職給付に関する会計基準の適用指針第41項以下参照)。

過去勤務費用についても数理計算上の差異と同様に差額の調整(差額を追加で費用計上するなど)が必要となります。過去勤務費用の費用処理方法については、数理計算上の差異の費用処理方法と同様の方法によるものとされており、過去勤務費用が発生した年度にすぐにその全額を費用処理する方法のほか以下のような方法により費用処理がなされます(退職給付に関する会計基準の適用指針第42項、第35項から第40項参照)。

定額法 予想される退職時から現在までの平均的な期間(平均残存勤務期間)以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理する方法です、費用処理額が毎期一定金額となります。

各期の費用化金額=過去勤務費用の発生金額÷一定の年数

定率法 未認識過去勤務費用(※)の残高の一定割合を費用処理する方法。この場合の一定割合は、過去勤務費用の発生額が平均残存勤務期間以内に概ね費用処理される割合とすることが必要です。

各期の費用化金額=未認識過去勤務費用×一定割合

(※)未認識過去勤務費用とは、発生した過去勤務費用のうち、未だ費用処理されていない金額をいいます。

過去勤務費用の費用処理については、退職金規程等の改訂による過去勤務費用については頻繁に発生するものでない限り、発生年度別に一定の年数にわたって定額法による費用処理を行うことが望ましいものとされています。

過去勤務費用に関するとの基本的な仕訳例

以下の資料より、決算時に必要な過去勤務費用に関する仕訳を示しなさい。

1.当期に退職給付水準の引上げを行った。これに伴う退職給付債務の増加額、すなわち過去勤務費用の発生額は500円であった。

2.過去勤務費用は平均残存勤務期間5年間において、毎期均等額の償却を行うものとした(定額法)。

3.過年度において、上記以外の過去勤務費用は発生していない。

(解答)

各期の過去勤務費用の費用化金額:過去勤務費用の総額500円÷平均残存勤務期間5年=100円

借方 金額 貸方 金額
退職給付費用 100 退職給付引当金 100

なお、期末時点の未認識過去勤務費用は以下のようになります。
500円-100円(当期償却額)=400円(不利差異)

退職給付水準の引き上げに伴い、退職給付債務が500円増加しています。損益計算上はこれを平均残存勤務期間5年にわたって毎期100円ずつ費用計上して認識することになりますので、その均等配分額100円が当期の費用となります(相手勘定は退職給付債務の増加を処理する表す「退職給付引当金」を使用します)

(関連ページ)
期待運用収益の仕訳・記帳

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加