会社が自分の発行した株式を取得した場合、当該株式を『自己株式』といいます。
会社が保有する自社の株式(自己株式)は、これを他社などに対し売却することができます。これを自己株式の処分といいます。
会社が自己株式を処分した時は仕訳は、処分した自己株式の帳簿価額を減額し、会社が受け取る金額と処分した自己株式の帳簿価額との差額について、受け取る金額の方が帳簿価額より大きい場合(利益が出る場合)には『自己株式処分差益』、逆に受け取る金額が帳簿価額より小さいとき(損が出る場合)には『自己株式処分差損』勘定を使って記帳します(処分差額については、差益と差損とを合わせて自己株式処分差額といいます)。
たとえば、帳簿価額10,000円の自己株式を11,000円で処分し、対価として現金を受け取った時の仕訳は以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 11,000 | 自己株式 | 10,000 |
自己株式処分差益 | 1,000 |
いっぽう、帳簿価額10,000円の自己株式を8,000円で処分し、対価として現金を受け取った時の仕訳は以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 8,000 | 自己株式 | 10,000 |
自己株式処分差損 | 2,000 |
自己株式処分する際に発生した手数料については『支払手数料』などの勘定を使い、営業外費用として処理します。
なお、期中に計上された自己株式処分差益・自己株式処分差損の貸借対照表における表示については、自己株式処分差益は純資産の部においてその他資本剰余金に計上し、自己株式処分差損はその他資本剰余金から減額します。自己株式処分差損の金額が大きく、これをその他資本剰余金から減額した結果、その他資本剰余金の残高がマイナスとなった場合には、会計期間末において、その他資本剰余金を0円とし、マイナスの金額をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額します。
(企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準第4項から第14項まで参照)。
演習問題:自己株式の処分時の処理
当社は自社の発行した株式である自己株式を100,000株(取得原価は1株当たり100円であり、合計の帳簿価額10,000,000円)保有している。このたび保有する100,000株の半分にあたる50,000株を1株当たり102円で処分し、振り込まれた代金は、自己株式を処分に際し要した証券会社などへの手数料40,000円を差し引き、残りの金額を当座預金に預け入れた。
(計算)
処分した自己株式の帳簿価額:50,000株×@100円=5,000,000円
自己株式の処分対価:50,000株×@102円=5,100,000円
自己株式処分差額:処分対価5,100,000円-帳簿価額5,000,000円=100,000(処分差益)
当座預金預入金額:処分対価5,100,000円-支払手数料40,000円=5,060,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 5,060,000 | 自己株式 | 5,000,000 |
支払手数料 | 40,000 | 自己株式処分差益 | 100,000 |
(関連ページ)
自己株式(自社の発行した株式)取得時の取得原価と仕訳
自己株式を消却した(消去した)ときの仕訳・記帳
株式交付費の費用処理と資産計上の仕訳