新株の発行または自己株式の処分に関連して発生した付随費用は『新株交付費』といいます。
たとえば、株式募集のための広告費・金融機関の取扱手数料・証券会社の取扱手数料・目論見書や株券等の印刷費・変更登記の登録免許税、その他株式の交付等のために直接支出した費用などがこれにあたります(以下、実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い 3.会計処理 (1)株式交付費の会計処理を参照)。
新株交付費の会計処理は、原則として、支出時の費用(営業外費用)として処理することになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
新株交付費 (営業外費用) |
現金預金など |
ただし、企業規模の拡大のためにする資金調達などの財務活動に係る株式交付費については、その効果が将来にわたって発現するものと期待できるため、これを繰延資産として計上することができることになっています(会計上の繰延資産。なお株式分割や無償割当てなどに係る費用は含みません)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
新株交付費 (繰延資産) |
現金預金など |
『株式交付費』を繰延資産として計上した場合には、株式交付のときから3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却することになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
新株交付費償却 (営業外費用) |
新株交付費 (繰延資産) |
演習問題:新株発行費
新株式の発行に伴う諸経費(株式募集のための広告費ほか、金融機関に支払う取扱手数料や株券等の印刷費など)として現金30,000円を支払った時の仕訳を示しなさい。なお新株発行費の会計処理は原則通り、支出時の費用として処理する。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
新株発行費 (営業外費用) |
30,000 | 現金 | 30,000 |
新株発行費は繰延資産として資産計上できる支出となりますが、原則は支出時に費用(営業外費用)として処理します。
かりに、これを繰延資産として計上した場合には以下の通りとなります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
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株式交付費 (繰延資産) |
30,000 | 現金 | 30,000 |
原則的な方法でも認められた方法でも上記仕訳の借方はともに『株式交付費』となっていますが、原則的な方法での『株式交付費』は費用、容認される方法での『株式交付費』は資産(繰延資産)をあらわしています。
『株式交付費』を繰延資産として計上した場合には、株式交付のときから3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却することになります。
上記の株式の交付が×1年4月1日(期首)であり、これを3年で償却した場合の×2年3月31日の償却計算と仕訳は以下のようになります。
当期の株式交付費償却額:株式交付費の支出額30,000円×12月/36月=10,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
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株式交付費償却 (営業外費用) |
10,000 | 株式交付費 (繰延資産) |
30,000 |
繰延資産の償却は直接法ですので、貸方には直接『株式交付費(繰延資産)』勘定を使います。
『株式交付費』を原則的な方法により計上時に費用処理した場合には、これは営業外費用となりますので、その償却費用である『株式交付費償却』も営業外費用となります。