外貨で発行した社債の決算時の換算については、決算時の為替レート(CR)を使って換算します(外貨建取引等会計処理基準一・2参照)。
外貨建社債の貸借対照表価額=外貨による発行価額(または償却原価)×決算時の為替レート |
なお、外貨建の自社発行社債について償却原価法を適用する場合の換算差額については以下のように処理します(外貨建取引等会計処理基準注解・注9参照)。
1.償却原価法の適用による当期の償却額は、外貨建ての当期償却額を期中平均相場(AR)により円換算し、これを『社債利息』として処理します。
2.外国通貨による償却原価を決算時の為替相場(CR)により円換算した額から、帳簿価額(当期発行の場合は発行金額、前期以前発行の場合は前期末評価額)および上記1の償却額を控除した金額を為替相場の変動に基づく当期の換算差額とし『為替差損益』として処理します。
円貨による償却原価(貸借対照表価額)=外貨による償却原価×決算時のレート 外貨による当期償却額×期中平均レート=社債利息(円貨による償却額) 円貨による償却原価-円貨による償却額-前期末評価額=為替差損益 |
上記の『社債利息』および『為替差損益』は、損益計算書上は営業外費用(または収益)の区分に表示し、決算時の損益として処理します。
演習問題:自社の発行した社債(償却原価法の適用あり)の決算時の換算
×1年4月1日(期首)において当社がドル建てで発行した下記社債について、×2年3月31日決算日の仕訳を示しなさい。なお×1年4月1日(期首)の為替レートは1ドル100円、×2年3月31日(決算時)の為替レート(CR)は1ドル120円、期中平均レート(AR)は110円であったものとする
(社債の条件)
1.発行金額は90ドル(額面金額は100ドル)であり、決算前の帳簿価額は発行時の為替レート1ドル100円で換算した9,000円である。
2.満期日は発行日から5年後の×6年3月31日であるものとする。
3.社債の約定利率は年利3%であり、毎年3月31日にその時点における為替レートで当座預金より支払われるものとする。
4.外貨による発行金額と額面金額との差額は償却原価法(定額法)を適用するものとする。
(解答-計算過程)
社債の約定利息の支払額:額面100ドル×年利3%×利払日のレート@120円=360円
社債の償却原価法による当期償却額(ドル建て):(100ドル-90ドル)÷5年=2ドル
当期償却額の円換算額:2ドル×AR@110円=220円
社債の貸借対照表価額(評価額):(発行金額90ドル+償却額2ドル)×CR@120円=11,040円
為替差損益:(決算前簿価9,000円+償却額220円)-社債の評価額11,040円=△1,820(為替差損)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
社債利息 (約定利息) |
360 | 当座預金 | 360 |
社債利息 (償却額) |
220 | 社債 | 2,040 |
為替差損益 | 1,820 |
償却原価法を適用した際の償却額は外貨による償却額に期中平均レート(AR)を乗じて算定します。
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外貨建借入金の決算時の換算について
外貨建満期保有目的の債券(償却原価法なし)の決算時の換算