リース基準においては、ファイナンス・リース取引とは、次のいずれも満たすリース取引をいうものとされます(リース取引に関する会計基準第5項参照)。
1.リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引(ノンキャンセラブル)
2.借手が、当該契約に基づき使用する物件(リース物件)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引(フルペイアウト) |
リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについては、上記の要件(ノンキャンセラブルとフルペイアウト)をともに満たす必要があり、その経済的実質に基づいて判断すべきものでありますが、より具体的には以下のいずれかの条件を満たす場合には、当該取引はファイナンス・リース取引と判定されます(リース取引に関する会計基準の適用指針第9項参照)。
現在価値基準 | 解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額(見積現金購入価額)の概ね90パーセント以上であること。
・リース料総額の割引現在価値≧借手の見積現金購入価額×90% |
経済的耐用年数基準 | 解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること
・解約不能のリース期間≧経済的耐用年数×75% |
なお上記の現在価値基準において借手が用いる割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率とし、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率を使用します(リース取引に関する会計基準の適用指針第17項参照)。
上記のうち現在価値基準がフルペイアウトの判定を行う原則的な基準と考えていますが、現在価値の計算をすべてのリース取引について行うことは実務上極めて煩雑と考えられるところから、簡便法としての経済的耐用年数基準を設けられています。
ただし、例外的にリース物件の内容により、リース期間が経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であっても借手がリース物件に係るほとんどすべてのコストを負担しないこともあるため、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の中古市場の存在等により、それが明らかな場合には原則的な基準である現在価値基準のみにより判定を行うことになります(リース取引に関する会計基準の適用指針第13項参照)
現在価値基準と経済的耐用年数基準の具体的数値として、それぞれの基準において「概ね90 パーセント以上」又は「概ね75 パーセント以上」とされるのは、現在価値基準の判定に見積りの要素が多いためであり、それらの数値を多少を下回るような場合であっても実質的にフルペイアウトと考えられる場合には、ファイナンス・リース取引と判定されることになります(リース取引に関する会計基準の適用指針第94項参照)。