建物や機械装置・備品などの有形固定資産を売却した時は、有形固定資産の帳簿価額を減額させ、減少した有形固定資産の帳簿価額と売却収入との差額を『固定資産売却損益』勘定(営業外損益)を使って処理することになります。
なお有形固定資産を売却した時は、売却した事業年度の期首から売却した日までの期間に対応する減価償却費を計上することが必要となりますが、有形固定資産を期中において売却した時は、期首から売却時までの減価償却費を月割で計上することになります(1か月未満の端数については切り上げます)。
演習問題:有形固定資産を期中に売ったとき
当社は12月20日において、以下の車両を250,000円で売却し、代金は現金で受け取った。車両売却時における仕訳を示しなさい(当社は4月1日から3月31日までを会計期間とする会社であり、減価償却費の記帳方法として間接法を採用している)。
(車両)
取得原価:1,000,000円
当期首までの減価償却累計額:700,000円
耐用年数:10年
減価償却費の算定方法:定額法
残存価額:0円
1.期首から売却時までの減価償却費の算定
当該車両については、当期において期首の4月1日から12月20日まで当社で使用しています。期中で固定資産を売却した時は期首から売却時までの減価償却費を月割(月未満の端数切上)で計上する必要がありますので、まずは車両の売却時までの減価償却を算定します。
(計算過程)
当期の車両の保有期間:4月1日から12月20日までの→9か月(端数期間は切り上げ)
当期の減価償却費:(1,000,000円/10年)×9月/12月=75,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | 75,000 | 減価償却累計額 | 75,000 |
2.売却損益の算定
当該車両の期首時点における帳簿価額は、取得原価1,000,000円から前期末までに計上した減価償却費の合計額である700,000円を控除した300,000円となります。
また上記1より、期首から売却時までの減価償却費は75,000円となりますので、売却時点における車両の帳簿価額は、期首における帳簿価額300,000円からさらに当期の減価償却費75,000円を控除した225,000円となります。
売却損益は売却収入と売却時点における帳簿価額との差額として算定しますので、その金額は以下のようになります。
(計算過程)
売却時の車両の簿価:取得原価1,000,000円-減価償却累計額(前期までの合計700,000円+当期分75,000円)=225,000円
車両の売却損益:売却収入250,000円-帳簿価額225,000円=25,000円(売却益)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 250,000 | 車両運搬具 | 1,000,000 |
減価償却累計額 | 775,000 | 固定資産売却益 | 25,000 |
3.まとめ
有形固定資産を期中に売却した時は、上記1の減価償却費の計上、および上記2の売却仕訳の2つの仕訳を行う必要があります。
上記1と2のように2つに分けても構いませんが、一般的には2つの仕訳を以下のようにまとめて処理します(当期に計上した減価償却累計額の75,000円が、上記1と2において借方・貸方の両方に計上されるためこれを相殺します)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 250,000 | 車両運搬具 | 1,000,000 |
減価償却費 | 75,000 | 固定資産売却益 | 25,000 |
減価償却累計額 | 700,000 | - | - |