外貨建の前受金の決算時の換算は取引発生時の為替レート(HR)を使って換算します(したがって換算替えは行いません)。
外貨建金銭債権債務については、為替相場変動による暫定的な影響を認識する考え方から、決算時の処理として、外貨建の金額に決算時の為替レート(CR)を使って算定された円換算額を貸借対照表価額と記帳することになります。しかし前受金は将来、財又はサービスの提供を行う収益性負債であり、金銭の支払いを目的とした外貨建金銭債務ではありません(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 第25項参照)。
したがって、決算時の為替レート(CR)による換算替えは行わず、取引発生時に使用した為替レート (HR)による円換算額をその貸借対照表価額とし、決算時の換算替えは必要ありません(換算差額としての損益である『為替差損益』も生じません)。
演習問題:外貨建前受金の決算時の記帳
1.前受金受け取り時の仕訳
アメリカの取引先へ500ドルの商品を販売するにあたり、前金として50ドルの現金を受け取った(前受金の受取時の為替相場は1ドル100円)。
(計算)
前受金計上額:50ドル×@100円=5,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 5,000 | 前受金 | 5,000 |
前受金の計上時(受け取り時)は受取った時の為替レートを使って換算します。したがって50ドルの前受金の帳簿価額はこれを取引発生時の為替レート@100円で換算した5,000円となります。
2.決算時の仕訳
上記1のドル建ての前受金について商品売上日の前に決算日を迎えた。なお決算時の為替レートは1ドル102円であった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
仕訳なし |
前受金は買掛金や借入金などの外貨建金銭債務とは異なるため、決算時のレートなどを使用した換算替えは行いません。したがって帳簿価額は取引発生時の為替レート(1ドル@100円)で換算した5,000円のままであり、換算替えの仕訳や換算差額の損益計上は行いません。
3.売り上げ時の仕訳
上記の商品売上取引について、アメリカへ商品を発送し商品を売り上げた。なお商品売上時における為替相場が1ドル105円であり、商品代金のうち前受金による充当額を除いた残額は売掛金とした。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前受金 | 5,000 | 売上 | 52,250 |
売掛金 | 47,250 |
まず商品の売上代金500ドルのうち、50ドルは前受金が充当されます。前受金の受け取り時の為替相場は1ドル100円ですので、前受金50ドルの円換算額は50ドル×@100円=5,000円となります(すでに上記1において円貨で記帳済みの金額を使用します)。
残りの450ドルについては商品売上時の為替相場で円換算額を算定します。商品売上時の為替相場は1ドル105円ですので、その円換算額は450ドル×@105円=47,250円となります(残額は売掛金として記帳します)。
(関連ページ)
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