外貨建て資産、負債の決算時の換算レートは、貨幣項目・非貨幣項目の別に以下のようになります。
貨幣項目 | 貨幣項目とは、売掛金や買掛金、外貨預金や貸付金・借入金など、将来において貨幣により決済される資産や負債をいいます。 貨幣項目は将来において貨幣による収支を伴うものであり、為替相場の変動リスクを負っているため、為替相場の変動が決算時点において企業の会計に与えている暫定的な影響をも認識するため、決算時の為替レート(CR)を使って換算します。 |
非貨幣項目 | 非貨幣項目とは、貨幣項目以外のもの(前払金や前受金、固定資産や棚卸資産など将来において収益化・費用化する資産や負債など)をいいます。 非貨幣項目は貨幣項目のように貨幣による決済を伴うものではないため、取得時または発生時の為替レート(HR)を使って換算します。 |
外貨建てで取得した資産や負債などは、その取得時などにおいて、その時点における為替レート(HR)を使って円換算した金額で記帳されています。
したがって、貨幣項目を決算時の為替レートで換算替えすることにより換算差額は生じることになりますが、換算替えによって生じた換算差額は『為替差損益』(営業外損益)を使って処理することになります。
演習問題:外貨建資産・負債の決算時の換算
本日決算日を迎えた。決算時における外貨建の資産・負債は以下の通りである。決算時における為替レートは1ドル120円であるものとし、必要な換算替えのための仕訳を示しなさい。
(決算時における外貨建資産・負債の残高)
1.売掛金500ドル(取引発生時の為替レートは1ドル100円であり、円換算額は50,000円)
2.借入金200ドル(取引発生時の為替レートは1ドル110円であり、円換算額は22,000円)
3.前受金100ドル(取引発生時の為替レートは1ドル105円であり、円換算額は10,500円)
(計算)
1.売掛金の換算差額:(決算時のレート120円-取引発生時のレート100円)×決算時の残高500ドル=10,000円
2.借入金の換算差額:(決算時のレート120円-取引発生時のレート110円)×決算時の残高200ドル=2,000円
3.前受金の換算差額:換算替えなし
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 10,000 | 為替差損益 | 10,000 |
為替差損益 | 2,000 | 借入金 | 2,000 |
売掛金や借入金などの貨幣項目は外貨額を決算時の為替レート(CR)で換算します。この時に生じる換算差額は『為替差損益』という営業外損益の勘定科目を使って処理し、決算時の損益とします。
いっぽう、前受金などの非貨幣項目は取得時または発生時の為替レート(HR)で換算します。しかし、すでにHRによる換算額で計上されているため、決算時において換算差額は生じません。