社債償還時の仕訳の基礎(買入償還の場合)

会社が発行した社債は、満期日に額面金額で償還(満期償還)することが原則ですが、満期日の前において社債権者から買い入れる形で償還することがあります。
このように社債を満期日前に社債権者から買い入れる形で償還(返済)することを社債の買入償還といいます。

社債を買入償還した場合は、社債勘定の帳簿残高を減額すると同時に買入金額と帳簿価額との差額を『社債償還損』または『社債償還益』として償還時における損益(特別損益)として処理することとなります。

社債の買入償還
借方 金額 貸方 金額
社債 (帳簿金額) 現預金など (買入金額)
社債償還損 (差額)

なお社債の買入償還を行う場合、以下の点に注意が必要です。

1.買入償還する社債について償却原価法を適用している場合、社債を償還する前に、前回の償却時から買入償還日までの期間に対応する償却計算を行い、社債の帳簿価額のを調整します。

2.社債の約定利息を支払います。

償却原価法による償却額、及び社債の約定利息の支払いは『社債利息』勘定を使って処理します。

償却原価法と約定利息支払いの仕訳
借方 金額 貸方 金額
社債利息 (償却額) 社債 (償却額)
社債利息 (約定利息) 現預金など (約定利息)

演習問題:社債の買入償還

x1年1月1日に発行した社債を×3年12月31日に買入償還した償還した。x3年12月31日の仕訳を示しなさい。

(社債発行条件)
・当該社債は×1年1月1日(満期日×5年12月31日)に額面金額1,000,000円の社債を950,000円で発行したものである。
・当該社債の約定利息は1.0%であり、毎年12月31日に1年分の利息を当座預金より支払うものとする。
・発行金額と額面金額との差額については償却原価法(定額法)を採用しているものとする。
・当該社債については×3年12月31日に額面金額100円あたり98.5円(裸相場)で買い入れて償還した。なお償還額については当座預金より支払うものとする。
・当社の決算日は毎年12月31日である。

(計算過程)
×1年1月1日から×5年12月31日までの月数:5年→60月
×1年1月1日から×2年12月31日(前期末)までの月数:2年→24月

社債の当期首(前期末)の帳簿価額:発行金額950,000円+(額面金額1,000,000円-発行金額950,000円)×24月/60月=970,000円

×3年12月31日の償却原価法による償却額:(額面金額1,000,000円-発行金額950,000円)×12月/60月=10,000円
×3年12月31日の社債の帳簿価額:当期首簿価970,000円+当期償却額10,000円=980,000円

償還損益:当期末簿価980,000円-買入金額(@98.5円×額面金額1,000,000円/100円)=△5,000円(社債償還損)

×5年12月31日の約定利息の支払い:額面金額1,000,000円×年利1%=10,000円

借方 金額 貸方 金額
社債利息
(償却原価法)
10,000 社債 10,000
社債利息
(約定利息)
10,000 当座預金 10,000
社債 980,000 当座預金 985,000
社債償還損 5,000

社債の買入償還時において、償却原価法による償却および約定利息の支払いを行います。また買入償還時において当期首から買入時まで償却原価法の償却を行うことによって社債の帳簿価額を調整することが必要となります。調整後の帳簿価額(980,000円)と買入償還額(985,000円)との差額は社債償還損益(本設問では社債の帳簿価額よりも買入金額の方が大きいため社債償還損)として処理します。

(関連ページ)
社債償還時の仕訳の基礎(満期償還の場合)

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