割賦販売の売上収益の認識基準のうち、回収基準・回収期限到来基準の仕訳方法には未実現利益整理法と対照勘定法と呼ばれる方法があります。
ここでは未実現利益整理法について収益認識を回収基準とすることを前提にご説明しています(対照勘定法については対照勘定法の基礎(割賦販売・回収基準)をご参照ください)。
未実現利益整理法(または未実現利益控除法)とは商品の引き渡し時においては、通常の売買と同様に売上収益を計上しますが、決算時において割賦金の未回収部分に含まれている利益(未実現利益)を売上収益から控除する方法をいいます。
1.商品の引き渡し時の仕訳
たとえば、売手が売価1,000円(仕入原価800円)の商品を5回の分割払いでお客さんに引き渡したとします。この時、売手が割賦販売の記帳法として未実現利益整理法を採用したとした場合、商品の引き渡し時の仕訳は以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
割賦売掛金 | 1,000 | 割賦売上 | 1,000 |
未実現利益整理法では、販売基準の場合と同じように商品の引き渡し時において『割賦売上』という売上収益を全額計上することになります(相手勘定は代金債権を表す『割賦売掛金』)。
2.決算時の仕訳
未実現利益整理法では、商品の引き渡し時にいったん売上収益全額を計上することになりますが、たとえば収益認識を回収基準とした場合、売上収益を計上することができるのは割賦金を現金などで回収した部分のみであり、未回収の部分は本来売上収益の計上はできないはずです。そこで割賦金の未回収部分に含まれている利益(未実現利益)を取り出し、これを売上総利益から控除することになります。
上記の設例1において、商品の引き渡し後において400円の割賦売掛金を回収し、未回収の割賦売掛金が600円残ったまま決算を迎えた場合、未実現利益120円を控除するための仕訳は以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延割賦売上利益控除 | 120 | 繰延割賦売上利益 | 120 |
割賦金1,000円のうち、未回収金額はその60%にあたる600円ですので、未実現利益は以下のように算定します
未実現利益120円=(売価1,000円-仕入原価800円)×60%
上記仕訳の借方の『繰延割賦売上利益控除』は、損益計算書において売上総利益の調整項目(控除項目)として表示され、貸方の『繰延割賦売上利益』は翌期に繰り越される利益を表すのもで、貸借対照表の流動負債の部に計上されます。
損益計算書の表示
Ⅰ 売上高
Ⅱ 売上原価
1.期首商品棚卸高
2.当期商品仕入高
合計
3.期末商品棚卸高
差引
繰延割賦売上利益控除 (-)120円
売上総利益
Ⅲ 販売費及び一般管理費