割賦販売・未実現利益整理法における戻り商品の会計処理

割賦販売の収益認識基準として回収基準や回収期限到来基準を採用しており、未実現利益整理法により記帳している場合、割賦売掛金の回収不能に伴い取り戻した商品(戻り商品)の会計処理のポイントは以下の通りです。

1.収益計上した割賦売掛金のうち、回収不能となった『割賦売掛金』を減額する。

2.取り戻した商品を取り戻し時の評価額で『戻り商品』として資産計上し、戻り商品の評価額と割賦売掛金の消去金額との差額については『戻り商品損失』として戻り時の損失(販管費)として処理します(当期販売・当期戻りの場合)。

3.前期決算時において『繰延売上利益(または繰延割賦売上利益)』を計上している場合は、未回収となった割賦売掛金に対応する『繰延売上利益』も消去します(前期以前販売・当期戻りの場合)。

回収基準・未実現利益整理法における戻り商品の仕訳

戻り商品の仕訳については、割賦売掛金が回収不能となって商品を取り戻したとしても、過去の売上を取り消すことはありません。あくまでも売上債権の貸し倒れとして処理する点がポイントとなります。

なお未実現利益整理法では、前期以前に販売された商品についてその決算時に、割賦金の未回収部分に対応する利益を『繰延売上利益』利益として繰り延べる処理を行っていますので、取戻し時に当該商品に係る『繰延売上利益』の取り崩しを行うことになります。

仮に割賦売掛金1,000円が回収不能となったため商品を取り戻し、その取り戻した商品の評価額が600円、当該商品について前期末に計上した繰延売上利益が300円であった場合は以下のように処理します。

借方 金額 貸方 金額
戻り商品 600 割賦売掛金 1,000
繰延売上利益 300
戻り商品損失 100

前期末において割賦売掛金に貸倒引当金が設定されていた場合にはさらにこれを取り崩し、戻り商品損失を補てんします。仮に50円の貸倒引当金が設定されていた場合の処理は以下のようになります。

借方 金額 貸方 金額
戻り商品 600 割賦売掛金 1,000
繰延売上利益 300
貸倒引当金 50
戻り商品損失 50

なお、上記の取り戻した商品(戻り商品 600円)は簿記の仕訳上は新たな仕入と見做して処理することになります。
したがって決算時などにこれを『仕入』勘定へ振り替え、また未販売の場合にはさらに『繰越商品』勘定へと振り替えられます。

借方 金額 貸方 金額
仕入 600 戻り商品 600
繰越商品 600 仕入 600

上記のうち一段目の仕訳は、戻り商品を新たな仕入として評価額で仕入勘定に振替えるための仕訳です。
また二段目の仕訳は売り残った商品を仕入勘定から繰越商品勘定へと振り替える仕訳です。したがって戻り商品が期末までに販売され、決算時においてすでに手許にはない場合には上記の二段目の仕訳は必要はありません。

(関連ページ)
割賦販売・販売基準における戻り商品の会計処理
割賦販売・対照勘定法における戻り商品の会計処理

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加