他社発行の債券(有価証券)を取得した場合や、自社が社債を発行した場合などにおいて、債券の貸借対照表価額の算定に償却原価法を用いることがあります。
償却原価法とは、金融資産又は金融負債を債権額又は債務額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法をいい、この場合の当該加減額は受取利息又は支払利息に含めて処理します(金融商品に関する会計基準注解・注5)。
償却原価法は債権・債務の額面金額と発行価格とが異なり、かつ、その差額の性格が金利の調整と認められる場合において、債権や債務の貸借対照表価額を算定するために適用されます。
償却原価法には定額法と利息法との2つの方法がありますが、このうち利息法とは、債権又は債務のクーポン利子額と金利調整差額との合計額が債権又は債務の帳簿価額に対し一定率(実効利子率)となるように、複利をもって各期の損益に配分する方法をいいます。
損益配分額=帳簿価額×実効利子率 |
なお、各期の損益配分額からクーポン利息額を控除した金額を金利調整差額として債権または債券の帳簿価額に加減します。
クーポン利子額=額面金額×クーポン利子率(債券の券面利子率) |
金利調整差額=損益配分額-クーポン利子額 |
償却原価法の適用については、会計上は原則として利息法を適用することが求められます。ただし契約上、元利の支払が弁済期限に一括して行われる場合又は規則的に行われることとなっている場合には、定額法によることが容認されています(金融商品会計に関する実務指針第105項参照)。
演習問題:償却原価法・利息法の計算
×1年4月1日(期首)に取得した債券(満期保有目的の債券として分類)について取得原価と額面金額との差額を償却原価法(利息法)で処理した場合、当該債券の各期の帳簿価額の推移と損益配分額(償却額とクーポン利子額)とを示しなさい。
(債券の取得条件)
取得日x1年4月1日(発行と同時)
満期日x4年3月31日
額面価額300,000円、取得原価291,000円、クーポン利息0.5%(利払日は毎年3月31日)
実効利子率1.531%
日付 | 調整前簿価 | 損益配分額 | クーポン利息 | 調整後簿価 |
x1年 4/1 |
291,000 | - | - | 291,000 |
x2年 3/31 |
291,000 | 4,455 | 1,500 | 293,955 |
x3年 3/31 |
293,955 | 4,500 | 1,500 | 296,955 |
x4年 3/31 |
296,955 | 4,545 | 1,500 | 300,000 |
(計算過程-×2年3月期)
×2年3月期の損益配分額=帳簿価額291,000円×実効利子率1.531%=4,455円
×2年3月期のクーポン利子額=額面金額300,000円×0.5%=1,500円(毎期同額)
×2年3月末の帳簿価額=決算前帳簿価額291,000円+(損益配分額4,455円-クーポン利子額1,500円)=293,955円
(計算過程-×3年3月期)
×3年3月期の損益配分額=帳簿価額293,955円×実効利子率1.531%=4,500円
×3年3月期のクーポン利子額=額面金額300,000円×0.5%=1,500円(毎期同額)
×3年3月末の帳簿価額=決算前帳簿価額293,955円+(損益配分額4,500円-クーポン利子額1,500円)=296,955円
(計算過程-×4年3月期)
×4年3月期の損益配分額=帳簿価額296,955円×実効利子率1.531%=4,545円(最終年のため端数を調整)
×4年3月期のクーポン利子額=額面金額300,000円×0.5%=1,500円(毎期同額)
×4年3月末の帳簿価額=決算前帳簿価額296,955円+(損益配分額4,545円-クーポン利子額1,500円)=300,000円
償却原価法(利息法)では、債券の帳簿価額に実効利子率を乗じて各期の損益配分額を算定します。
損益配分額からクーポン利子額(額面利息)を控除した額を償却額として各期の帳簿価額に加減し、翌期は新しい帳簿価額に実効利子率を乗じることになります。
(関連ページ)
社債の決算時の処理(償却原価法-利息法)