社債の決算時の処理(償却原価法-利息法)

社債を割引発行した場合、発行した社債の貸借対照表価額については償却原価法に基づいて算定することになります(金融商品に関する会計基準第26項、同注解5参照)。

償却原価法とは、社債を債務額と異なる金額で発行した場合(割引発行した場合など)において、当該差額に相当する金額を社債の償還期に至るまで毎期一定の方法で発行金額に加算する方法をいいます。
社債を割引発行した時の差額は一般的には金利調整差額(一種の前払利息)ですので、利息と同様にこれを償還期に至るまでの各期の費用として処理するとともに、当該償却額を社債の発行金額に加算していくことになります。
なお、償却原価法には定額法利息法という2つの方法がありますが、ここでは利息法についてご紹介していきます(定額法については社債の決算時の処理(償却原価法-定額法)についてをご参照ください)。

償却原価法-利息法の計算と会計処理

社債の貸借対照表価額の算定方法のうち、償却原価法利息法とは、社債の約定利子額と金利調整差額との合計額が社債の帳簿価額に対し一定率(実効利子率といいます)となるように、複利をもって損益を各期に配分する方法をいいます(各期に配分された損益は社債利息として処理します)。
言葉で言ってしまうと難しいですが、社債の問題などを解答する場合は次のことを理解しておいてください。

1.まず各期に損益として配分する額(社債利息の計上額)についてですが、これは社債の帳簿価額に実効利子率を乗じて算定します。実効利子率は問題文で与えられますのでそれを利用して社債の帳簿価額から社債利息計上額を算定してください。

損益配分額(社債利息計上額)=社債の帳簿価額×実効利子率

2.次に社債の帳簿価額の調整ですが、これは上記の損益配分額から、次の約定利息額を控除した金額を金利調整差額の配分額として社債の帳簿価額に加算していきます。

約定利子額=額面金額×約定利子率
金利調整差額=損益配分額-約定利子額

各期に配分された損益額は『社債利息』として処理します。なお損益配分額は上記の通り約定利息額と金利調整差額の配分額が含まれますが、後者の金利調整差額の配分額は社債の帳簿価額に加算します

(償却原価法-利息法による仕訳)
借方 金額 貸方 金額
社債利息 (約定利息額) 現預金など (約定利息額)
社債利息 (金利調整差額) 社債 (金利調整差額)

演習問題:社債の帳簿価額の調整(償却原価法-利息法の場合)

×1年4月1日(期首)に発行した以下の社債について、金利調整差額(発行金額と額面金額との差額)を償却原価法(利息法)で処理した場合、自社発行社債の各期の帳簿価額の推移と損益配分額(償却額と約定利子額)とを示し、×2年3月31日に必要な仕訳を示しなさい。

(社債発行の条件)
発行日x1年4月1日
満期日x4年3月31日

額面金額300,000円、発行金額291,000円
約定利息率0.5%(利払日は毎年3月31日であり当座預金より支払うものとする)
実効利子率1.531%

(解答1.各期の帳簿価額の推移と損益配分額)

(社債の帳簿価額の推移と各期の損益配分額-償却原価法・利息法)
日付 調整前簿価 損益配分額 約定利息 調整後簿価
x1年
4/1
291,000 291,000
x2年
3/31
291,000 4,455 1,500 293,955
x3年
3/31
293,955 4,500 1,500 296,955
x4年
3/31
296,955 4,545 1,500 300,000

(計算過程-×2年3月期)
×2年3月期の損益配分額=帳簿価額291,000円×実効利子率1.531%=4,455円
×2年3月期のクーポン利子額=額面金額300,000円×0.5%=1,500円(毎期同額)
×2年3月末の帳簿価額=決算前帳簿価額291,000円+(損益配分額4,455円-クーポン利子額1,500円)=293,955円

(計算過程-×3年3月期)
×3年3月期の損益配分額=帳簿価額293,955円×実効利子率1.531%=4,500円
×3年3月期のクーポン利子額=額面金額300,000円×0.5%=1,500円(毎期同額)
×3年3月末の帳簿価額=決算前帳簿価額293,955円+(損益配分額4,500円-クーポン利子額1,500円)=296,955円

(計算過程-×4年3月期)
×4年3月期の損益配分額=帳簿価額296,955円×実効利子率1.531%=4,545円(最終年のため端数を調整)
×4年3月期のクーポン利子額=額面金額300,000円×0.5%=1,500円(毎期同額)
×4年3月末の帳簿価額=決算前帳簿価額296,955円+(損益配分額4,545円-クーポン利子額1,500円)=300,000円

(解答2. ×2年3月31日の仕訳)

(解答)×2年3月31日の仕訳
借方 金額 貸方 金額
社債利息 4,455 当座預金 1,500
社債 2,955

償却原価法(利息法)では、社債の帳簿価額に実効利子率を乗じて各期の損益配分額を算定します。
また損益配分額から約定利子額を控除した額を金利調整差額の配分額として各期の帳簿価額に加算し、次期は新しい帳簿価額に実効利子率を乗じることになります。

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