社債の金利調整差額と償却原価法について

社債を割引発行した場合、発行価格(払い込まれた金額)をもって『社債』という負債勘定で記帳します(額面金額100円の社債を95円で発行した場合、発行時における社債勘定の計上額95円となります)。

(社債の発行時)
借方 金額 貸方 金額
預金 95 社債 95

いっぽう社債の償還は額面金額(上記の例でいえば額面金額である100円で返還します)で行いますので、発行価格と額面金額との差額について何らかの処理が必要となります。

(社債の償還時)
借方 金額 貸方 金額
社債 100 預金 100

償還金額100円-発行金額95円=5円?

一般的には社債を割引発行した時の額面金額と発行価格との差額は金利調整差額としての性格をもちます。すなわち社債の利率を市場金利よりも安く設定する場合、社債を購入するものが不利とならないように、発行価格を額面金額より安く設定したものがこの差額といえます(社債金利を市場金利よりも安く設定する代わりに、額面金額よりも安く発行し、割引分も含めた実質的な社債金利が市場金利よりも不利にならないように調整した金利調整差額であり、一種の前払い利息のようなもの)。

満期保有目的の債券などの金銭債権を債権金額より低い価額で取得した場合において、この差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとなりますが。自社の発行した社債など金銭債務についても、その差額は上記のように一般に金利の調整としての性格を有しているため、償却原価法に基づいて処理し、償却原価法に基づく価額を毎期の貸借対照表価額とすることになります(金融商品に関する会計基準 第26,90項及び同注解5参照)

なお、償却原価法については利息法と定額法とがあり、それぞれ以下のようになります。

償却方法 内容
利息法
(原則的方法)
利息法とは、社債のクーポン利息と各期に配分される金利調整差額との合計額が社債の帳簿価額に対し一定率(実効利子率)となるように、複利をもって各期の損益に配分する方法をいいます。各期の損益に配分された配分額とクーポン利息額との差額(=帳簿価額×実効利子率-債権額×クーポン利子率)を各期の金利調整差額として社債の帳簿価額に加算します。
定額法
(容認的方法)
定額法とは、当該金利調整差額を発行日から償還日までの期間で除し、算出された一定額を各期の損益として配分する方法をいいます。各期に配分される損益(金利調整差額)については、社債の帳簿価額にこれを加算します。

各期に配分された金利調整差額については『社債利息』に含めて処理し各期の損益とし、また金利調整差額と同額だけ『社債』の帳簿価額を加算し、発行価額を額面金額へ毎期修正していくことになります。

(関連ページ)
社債の仕訳の基礎
償却原価法・定額法(しょうきゃくげんかほう)の計算
償却原価法・利息法の計算

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