最終仕入原価法の基礎(棚卸資産の払出単価・期末在庫の評価)

棚卸資産の評価方法には、先入先出法や平均法・個別法など会計基準で定められる方法のほか、おもに税法において定められる最終仕入原価法というものがあります。
最終仕入原価法とは、期末から最も近い時において仕入れた商品1単位当たり取得価額(最後に仕入れた時の価格)をもって、期末棚卸資産の価額を計算とする方法をいい、法人税法に定める法定評価方法とされています(法人税法施行令第29条第1項、第31条第1項等参照)。

期末棚卸資産の価額=最後の仕入時の仕入単価×期末棚卸資産数量

演習問題:最終仕入原価法における期末棚卸資産原価の算定

当社の当期のA商品の仕入・販売は以下の通りである。法人税法で定める法定評価方法(最終仕入原価法)により期末棚卸資産の原価を算定しなさい(当社の決算日は毎期3月31日である)。

4月1日:期首商品棚卸高は10個(@400円)であった
5月11日:A商品30個を1個当たり@300円で仕入れた
7月22日:A商品20個を販売した
12月24日:A商品30個を1個当たり@500円で仕入れた
3月12日:A商品40個を販売した
3月27日:A商品10個を1個当たり@350円で仕入れた

(解説)
最終仕入原価法では、最後に仕入れた商品の仕入れ単価を使って、期末に残っている商品の価格を計算します。
期末商品棚卸高の価格は、期末の商品在庫の数量に最後の仕入時の仕入単価を乗じて算定します。

下記の商品有高帳より、本問におけるそれぞれの仕入単価・数量および期末棚卸資産数量の算定は以下のようになります。

日付 受入 払出 残高
4/1 期首 10個(400円) 10個
5/11 仕入 30個(@300円) 40個
7/22 売上 20個 20個
12/24 仕入 30個(@500円) 50個
3/12 売上 40個 10個
3/27 仕入 10個(@350円) 20個

上記の商品有高帳より、当期においてA商品の最後の仕入は3月27日であり、その仕入単価は1個当たり350円であること、および期末のA商品の在庫数量は20個であることが分かりますので、最終仕入原価法におけるA商品の期末在庫の価格はこれらを乗じて以下のように算定します

A商品期末残高:最終仕入単価@350円×期末在庫数量20個=7,000円

最終仕入原価法は法人税法で定める法定評価方法であり、法人が棚卸資産の評価方法を届け出なかった場合には、棚卸資産の評価方法として最終仕入原価法を選択したことになります(法人税法施行令第31条第1項参照)。

最終仕入原価法は上記の通り、最終仕入単価に期末在庫の数量を乗じるだけですので、実務的には非常に簡便な方法であり、法人税法に定める法定評価方法ということもあり、実務では非常に多く使われる方法です。

しかし最終仕入原価による期末棚卸資産価格は、実際の棚卸資産の取得原価とは異なり(最終仕入数量>期末在庫数量の場合)、その一部を時価に近い価格で評価するものであることから、取得原価を評価の基礎とする制度会計における取得原価基準から外れる評価方法であると考えられることになります。したがって、会計上は期末棚卸資産の大部分が最終の仕入価格で取得されているときのような場合や、期末棚卸資産に重要性が乏しい場合など、限定的な条件のもとで容認的に採用される方法と考えられています(棚卸資産の評価に関する会計基準34-4参照)。

(関連ページ)
個別法の基礎(払出単価の決定・棚卸資産の評価方法)
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