商品の払出単価の決定方法(期末棚卸資産の評価方法)のうち、平均原価法とは、取得した棚卸資産の平均原価を算出し、この平均原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法をいいます(棚卸資産の評価に関する会計基準6-2(3)参照)。
なお、平均原価の算定は方法には総平均法と移動平均法との2つの方法があります。
上記のうち、移動平均法による平均原価の算定は、単価の異なる棚卸資産を新たに受け入れる都度、その時点における平均単価を算定し、この平均単価をもって棚卸資産の払出単価とする方法をいいます(総平均法については総平均法の基礎(払出単価の決定・棚卸資産の評価方法)をご参照ください)。
(移動平均法による平均単価) 平均単価=(在庫として残っている棚卸資産の価額+新たに仕入れた棚卸資産の価額)÷(在庫として残っている棚卸資産数量+当たらに仕入れた棚卸資産数量) (期末棚卸資産の価額) |
演習問題:移動平均法による払出原価・期末棚卸資産原価の算定
当社の当期のA商品の仕入・販売は以下の通りである。平均原価法(移動平均法)により期末棚卸資産の原価を算定しなさい(当社の決算日は毎期3月31日である)。
4月1日:期首商品棚卸高は10個(@400円)であった 5月11日:A商品30個を1個当たり@300円で仕入れた 7月22日:A商品20個を販売した 9月30日:A商品30個を1個当たり@500円で仕入れた 2月18日:A商品40個を販売した |
(解説)
移動平均法では、単価の異なる商品を仕入れる都度、その時点における平均単価を算定し、この平均単価をもって次回払出時における商品の払出単価とすることになります。
また期末商品棚卸高は、期末時点における平均単価に、期末に残っている商品の在庫数量を乗じて算定します。
なお、移動平均法による商品有高帳、およびそれぞれの払出単価・期末棚卸資産価額の算定は以下のようになります。
日付 | 受入 | 払出 | 残高 |
4/1 期首 | 10個(400円) | 10個 | |
5/11 仕入 | 30個(@300円) | 40個(@325) | 7/22 売上 | 20個(@325) | 20個(@325) |
9/30 仕入 | 30個(@500円) | 50個(@430円) | |
2/18 売上 | 40個(@430円) | 10個(期末在庫) |
5/11仕入時の平均単価:(@400円×10個+@300円×30個)÷(10個+30個)=@325円 9/30仕入時の平均単価:(@325円×20個+@500円×30個)÷(20個+30個)=@430円 期末在庫価額:期末数量10個×期末における平均単価@430円=4,300円 |
移動平均法では、期中においても商品の払出単価や在庫金額を把握することができ、棚卸資産の価格管理・損益管理の観点から優れた方法であるといえます。
しかし上記の設問の通り、商品を仕入れる都度、平均単価を算定し直す必要がるため、総平均法などと比べると実務上煩雑な方法であるといえます。
(関連ページ)
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