売価還元原価法の基礎(棚卸資産の評価方法)

期末棚卸資産の評価方法(商品の払出単価の決定方法)のうち、売価還元法とは、値入率等の類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、原価率を乗じて求めた金額を期末棚卸資産の価額とする方法 をいいます。(棚卸資産の評価に関する会計基準6-2(4)参照)。

すなわち、売価還元法は値入率等(原価率など)の近い商品などの棚卸資産をひとまとめのグループとし、期末に残った棚卸資産のグループごとの売価の合計に原価率を乗じることにより、その期末棚卸資産原価をまとめて算定する方法です。

期末棚卸資産の原価=棚卸資産の売価×原価率

売価還元法は期末商品などの売価の合計に原価率を乗じることにより期末在庫の評価額を算定する方法であり、先入先出法などのように各商品の単位原価をもって期末在庫の評価を行う方法とは異なります。
この方法は品目ごとの単位原価をもって棚卸資産を評価することが困難な取得品種のきわめて多い小売業や卸売業などの棚卸資産の評価に適用され、取得原価基準に属する評価方法として認められています(棚卸資産の評価に関する会計基準6-2(4)、連続意見書第四・第一・二4参照)。
なお、売価還元原価法における原価率は以下の算式により算定する。

売価還元原価法の原価率=A/B

A(分子)=期首繰越商品原価+当期受入原価総額
B(分母)=期首繰越商品小売価額+当期受入原価総額+原始値入額+値上額-値上取消額-値下額+値下取消額

※ 原始値入額とは、仕入原価に対し加算した最初の利益をいいます

なお上記の方法及び原価率については、収益性の低下を反映した売価還元低価法と区分し、売価還元原価法と呼ばれています。

演習問題:売価還元原価法による期末棚卸資産原価の算定

当社(小売業)では、期末在庫を売価還元法を使用し評価している。以下の当社の商品に関するデータから期末商品原価を算定しなさい。

期首商品:100,000円(原価)、120,000円(売価)

当期仕入高:900,000円
原資値入額:240,000円
値上額:30,000円
値上取消額:15,000円
値下額:35,000円
値下取消額:10,000円

期末商品売価:200,000円

(解説)
売価還元法における期末在庫の評価は期末在庫の売価に原価率を乗じて算定されます。
期末在庫の売価に乗じる原価率については、期首在庫と当期仕入分の原価を売価で除して算定します(上記の算式をご参照ください)。

1.原価率の算定
A(分子):期首100,000円+当期仕入900,000円=1,000,000円
B(分母):期首120,000円+当期仕入900,000円+原始値入240,000円+値上30,000円-値上取消15,000円-値下35,000円+値下取消10,000円=1,250,000円
原価率:1,000,000円/1,250,000円=0.8

2.期末商品原価
期末商品原価:期末商品売価200,000円×原価率0.8=160,000円

(関連ページ)
先入先出法の基礎(払出単価の決定・棚卸資産の評価方法)
総平均法の基礎(払出単価の決定・棚卸資産の評価方法)
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最終仕入原価法の基礎(棚卸資産の払出単価・期末在庫の評価)

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