1.減損会計とは
貸借対照表に計上されている建物や機械・車両などの固定資産については、たとえその固定資産の時価(市場で取引されている価額など)が増減してとしても貸借対照表価額を時価評価することなく、取得価額から減価償却費を控除した金額で評価します。
これは、これらの固定資産については売却による資金の回収を予定しているのではなく、固定資産を継続的に使用することで売上収益を得ることにより固定資産に投資した資金を回収することを前提としているためといえます。
しかし、固定資産の収益性が当初の予想よりも低下し、固定資産への投資した額を今後の収益によって回収することが見込めなくなった場合、この固定資産の回収可能性を帳簿価額に反映させなければならない場合があります。固定資産をその資産の回収見込み額を大きく上回る価格で貸借対照表に計上することは、貸借対照表の利用者に企業の評価に間する誤った情報を提供することになりかねないためです。
固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合において一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理をいいます(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書三3参照)。
2.減損会計のステップ
減損処理は以下のようなステップをもとに、減損処理を行うのかどうか、減損処理が必要な場合の金額はいくらか、などを決定していきます。
ステップ | 内容 |
1.減損の兆候の把握 | まず減損の兆候のある資産または資産グループを把握します。減損の兆候とは、資産又は資産グループについて、減損が生じている可能性を示す事象のことをいい、例えば次の事象が発生している場合に減損の兆候があるものとされています。
(1) 資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること。 |
2.減損損失の認識 | 減損の兆候がある資産又は資産グループについて把握された場合、次にその減損の兆候がある資産または資産グループについて、実際に減損損失を認識するかどうかの判定をおこないます(実際に減損損失を計上するかどうかの決定を行います)。
この減損損失を認識するかどうかの判定については、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識します。 ・割引前将来キャッシュフロー≧帳簿価額の場合:減損損失を認識しない(減損会計はここで終わり)。 ・割引前将来キャッシュフロー<帳簿価額の場合:減損損失を認識する。 |
3.減損損失の測定 | ある資産または資産グループについて減損損失を認識すべきであると判定した場合、次にいくらの減損損失を計上する必要があるか、その金額を決定する必要があります。
この「いくらの減損損失を計上するか」については、資産又は資産グループについては帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とすることが必要調整なっています 減損損失の金額=帳簿価額-回収可能価額 ここで、回収可能価額とは資産又は資産グループの正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額)と使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い方の金額をいいます。 |