固定資産の減損を考える場合、複数の資産を1つのグループとして取り扱い、グループ全体として固定資産の減損を考える場合があります(固定資産のグルーピング)。
たとえば工場の製造ラインを構成する複数の機械のように複数の資産が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出す場合には、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に際して、その複数の資産を一体とみなして(資産のグルーピング)これらの適用を考える必要があります。
どのくらいの範囲(グルーピングの単位)で資産のグルーピングを行うかについては、それぞれの資産の置かれた状況により判断されることとなりますが、判断の基準としては他の資産または資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位でそれぞれの資産をグループ化することになります(固定資産の減損に係る会計基準二、6(1)参照)。
ここでは資産グループ(複数の資産)について認識・測定した減損損失についての処理を見ていきましょう。
資産のグルーピングと減損損失の認識と測定について
まず次のような簡単な例を設定し、順を追ってご説明いたします。
工場の製造ラインを構成するA機械(帳簿価額:200,000円)とB機械(300,000円)について減損の兆候が把握された。当該機械AとBとは製品の製造ラインを構成する機械であり、2つの機械が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出している。
機械AとBの割引前キャッシュ・フローは合計で300,000円、回収可能価額は250,000円であった。機械Aと機械Bについてそれぞれの機械に配分される減損損失の金額をもとめ、減損損失を計上する際の仕訳を示しなさい。なお、減損損失の機械A・Bへの配分はそれぞれの帳簿価額をもとに配分し、減損損失の記帳は直接法によるものとする。 |
機械A | 機械B | 合計 | |
---|---|---|---|
帳簿価額 | 200,000 | 300,000 | 500,000 |
割引前CF | - | - | 300,000 |
回収可能価額CF | - | - | 250,000 |
1.減損損失の認識
すでに設例では減損の兆候有りとありますので、まずここでは減損の兆候はあるものとし、減損損失の認識の判定を行っていきます。
減損損失の認識の判定は、帳簿価額と割引前将来キャッシュフローとを比較し、割引前将来キャッシュフローが帳簿価額を下回るようであれば減損損失の認識すべきであると判定します。
なお、資産グループについて減損損失の認識の判定をする場合は、資産グループ全体の帳簿価額の合計と割引前将来キャッシュフローとを比較し、判定を行います。
資産グループ全体の帳簿価額500,000円>資産グループ全体の割引前将来キャッシュフロー300,000円 |
この設例では資産グループ全体の割引前将来キャッシュフローが帳簿価額の合計を下回っておりますので、減損損失の認識し、減損損失の測定を行うこととなります。
2.減損損失の測定
資産グループとして減損損失を認識すると判定いたしましたので、次に減損損失の金額を測定します。
減損損失の金額は固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで引き下げることにより測定しますが、資産グループの場合には資産グループを構成する各資産の帳簿価額の合計額を資産グループの回収可能価額の合計まで引き下げることによって測定します。
資産グループの減損損失の金額:資産グループの帳簿価額の合計500,000円-回収可能価額の合計250,000円=250,000円 |
3.減損損失の金額の各資産への配分
上記2では資産グループ全体としての減損損失の金額を測定しました。次に資産グループ全体として把握された減損損失の金額を資産グループを構成する各資産(機械Aと機械B)へと配分します。
この設例ではそれぞれの帳簿価額をもとに配分することとされていますので、資産グループ全体として把握された減損損失の250,000円を機械Aと機械Bの帳簿価額を基準に配分します。
機械Aの減損損失の配分額:減損損失の金額250,000円×(機械Aの帳簿価額200,000円/資産グループ全体の帳簿価額500,000円)=100,000円
機械Bの減損損失の配分額:減損損失の金額250,000円×(機械Aの帳簿価額300,000円/資産グループ全体の帳簿価額500,000円)=150,000円 |
それぞれの資産への配分額については直接記帳法で記帳しますので仕訳は以下の通りとなります(直接法)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減損損失 | 100,000 | 機械装置 (機械A) |
100,000 |
減損損失 | 150,000 | 機械装置 (機械B) |
150,000 |