後入先出法とは(棚卸資産の評価方法・現行制度外)

商品の払出単価の決定方法(期末棚卸資産の評価方法)には、棚卸資産の評価に関する会計基準6-2(2)によって規定される先入先出法や平均原価法などのほかに後入先出法という考え方があります。後入先出法とは、最も新しく取得されたものから順次払出しが行われ、期末棚卸資産は最も古く取得されたものからなるとみなして期末棚卸資産の価額を算定する方法 をいいます。(棚卸資産の評価に関する会計基準34-5参照)。

演習問題:後入先出法による払出原価・期末棚卸資産原価の算定

当社の当期のA商品の仕入・販売は以下の通りである。後入先出法により期末棚卸資産の原価を算定しなさい(当社の決算日は毎期3月31日である)。

4月1日:期首商品棚卸高0円(在庫なし)
4月14日:A商品30個を1個当たり@300円で仕入れた
5月22日:A商品20個を1個当たり@400円で仕入れた
6月15日:A商品40個を販売した
9月9日:A商品50個を1個当たり@200円で仕入れた
1月18日:A商品10個を販売した
2月20日:A商品20個を販売した

(解説)
後入先出法では仕入原価の異なる商品を仕入れた場合、後から仕入れたものから順次払出を行うものとして払出単価を決定します。
たとえば、本問では6月15日にA商品40個を販売していますが、この40個の内訳は、まず5月22日に仕入れた20個を全て払い出し、残りの20個を4月14日に仕入れた30個のうちの20個を払い出したものとすることになります。
このような流れを商品有高帳を使って示すと以下のようになります。

日付 受入 払出 残高
4/14 仕入 30個(@300円) 30個(@300円)
5/22 仕入 20個(@400円) 30個(@300円)
20個(@400円)
6/15 売上 20個(@400円)
20個(@300円)
10個(@300円)
9/9 仕入 50個(@200円) 10個(@300円)
50個(@200円)
1/8 売上 10個(@200円) 10個(@300円)
40個(@200円)
2/20 売上 20個(@200円) 10個(@300円)
20個(@200円)

上記より、期末に残っているA商品の残高(期末棚卸資産残高)は9月9日に仕入れた50個のうちの20個および4月14日に仕入れた30個のうちの10個なります。したがってA商品の期末残高は以下の通りです。

A商品の期末残高:10個×@300円+20個×@200円=7,000円

後入先出法は、後から仕入れたものから順次払出しを行うと仮定するため、物価上昇時においても収益と費用をほぼ同一価格の水準において対応させることができ、棚卸資産の保有損益を期間損益から排除した、より適切な期間損益計算を可能とする方法であるといえます(収益と費用との同一価格水準での対応、期間損益計算の適正化)。

いっぽう、後から仕入れたものから順次払い出すという仮定は、在庫となった棚卸資産が古い価格水準のままずっと繰り越されることを意味し、貸借対照表における棚卸資産の価額がその時点における実際の価格(再調達原価)から大きく乖離することになります。

また、期末の在庫数量が期首の在庫数量を下回る場合(期首在庫の一部が払い出された場合)には、計算上において非常に古い価格水準の原価を当期の収益と対応させることになり、前述の期間損益計算の適正化を大きく阻害することになります。さらに長期にわたる保有損益が一時に期間損益計算に反映すること利用した恣意的な在庫数量操作による利益操作を容易を可能としてしますことになります(期末在庫の数量を調整することによって、保有損益を意図的に任意の期に計上することが可能となってしまします)。

国際的にも後入れ先出し法の採用は認めない方向となっているため、現行制度会計において棚卸資産の評価基準として後入先出法を採用することはできないことになっております(棚卸資産の評価に関する会計基準34-5以下参照)。

(関連ページ)
個別法の基礎(払出単価の決定・棚卸資産の評価方法)
先入先出法の基礎(払出単価の決定・棚卸資産の評価方法)
総平均法の基礎(払出単価の決定・棚卸資産の評価方法)
移動平均法の基礎(棚卸資産の払出単価・期末在庫の評価)
売価還元原価法の基礎(棚卸資産の評価方法)

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