会社の成立してから開業までに要した開業準備のための費用を『開業費』といいます。
なお、ここでいう開業には会社の営業全部の開業に限られず、その営業の一部を開業したときも含まれることに注意が必要となります。
一般に開業費には、土地や建物などの賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用品費、支払利子、使用人の給料、保険料、水道光熱費などで、開業準備のために直接支出した金額が含まれます(以下、実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い 3.会計処理 (4)開業費の会計処理を参照)。
開業費の会計処理は、原則として、支出時の営業外費用(販売費及び一般管理費として処理することも容認されています)として処理することになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
開業費 (営業外費用または販管費) |
現金預金など |
ただし、開業費については、その効果が将来にわたって発現するものと期待できるため、これを繰延資産として計上することができることになっています(会計上の繰延資産)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
開業費 (繰延資産) |
現金預金など |
『開業費』を繰延資産として計上した場合には、開業のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却することになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
開業費償却 (営業外費用または販管費) |
開業費 (繰延資産) |
演習問題:開業費の仕訳
会社成立後開業準備期間に発生した事務所の家賃300,000円を現金で決済した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
開業費 (営業外費用または販管費) |
300,000 | 現金 | 300,000 |
開業費を支出した時の会計処理は、原則は支出時に費用(営業外費用または販売費及び一般管理費)として処理しますが、これを繰延資産として処理することも可能です。
上記の会社成立後開業までに発生した費用で開業準備のために直接支出した金額について繰延資産として計上した場合には以下の通りとなります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
開業費 (繰延資産) |
300,000 | 現金 | 300,000 |
原則的な方法でも認められた方法でも上記仕訳の借方はともに『開業費』となっていますが、原則的な方法の時に計上された借方『開業費』は費用、容認される方法で計上された借方『開業費』は資産(繰延資産)をあらわしています。
『開業費』を繰延資産として計上した場合には、営業開始の時から5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却することになります。
会社の営業開始が×1年4月1日(期首)であり、これを5年で償却した場合の×2年3月31日の償却計算と仕訳は以下のようになります。
当期の開業償却額:当初の開業費計上額300,000円×12月/60月=60,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
開業償却 (営業外費用または販管費) |
60,000 | 開業費 (繰延資産) |
60,000 |
繰延資産の償却は直接法ですので、貸方には直接『開業費(繰延資産)』勘定を使います。
『開業費』を原則的な方法により計上時に費用処理した場合には、これは営業外費用または販売費及び一般管理費となりますので、その償却費用である『開業費償却』も営業外費用または販売費及び一般管理費となります。
(関連ページ)
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