部分純資産直入法の仕訳の基礎

その他有価証券とは、売買目的有価証券・満期保有目的の債券・子会社株式・関連会社株式以外の有価証券をいいます。
保有するその他有価証券については『投資有価証券』勘定(投資その他の資産)を使って記帳します(ただし、1年以内に満期が到来する債券については『有価証券』勘定(流動資産)を使用します)。

その他有価証券の決算時の評価については、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は洗い替え方式に基づき、次のいずれかの方法により処理します(金融商品に関する会計基準 第18項参照)。

全部純資産直入法 その他有価証券の決算時における評価差額(評価差益及び評価差損)の合計額を『その他有価証券評価差額金』(純資産)に計上する方法です。
部分純資産直入法 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額(評価益)は『その他有価証券評価差額金』(純資産)に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額(評価損)は当期の損失として『投資有価証券評価損』(営業外費用)として計上する方法です。

上記の2つの方法のうち、原則的には全部純資産直入法を適用するが求められますが、継続適用を条件として部分純資産直入法を適用することもできます。また、株式、債券等の有価証券の種類ごとに両方法を区分して適用することも認められます(金融商品会計に関する実務指針 第73項参照)。

部分純資産直入法は継続適用を条件に採用できる方法であり、各銘柄ごとの時価と取得原価とを比較し、時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額(評価益)は『その他有価証券評価差額金』として損益計算を経ないで純資産の部に直接計上するのに対し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額(評価損)は当期の損失として『投資有価証券評価損』(営業外費用)として計上します。

(評価益が出るケースの仕訳)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 その他有価証券評価差額金
(評価損が出るケースの仕訳)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券評価損 投資有価証券

演習問題:その他有価証券の評価(部分純資産直入法)

1.×1年度決算時において、当社の保有する株式の取得原価および時価は以下の通りであった(すべてその他有価証券として区分しているものとする)。×1年度決算時の評価に関する仕訳を示しなさい。なお当社ではその他有価証券の評価差額の取り扱いについては部分純資産直入法を採用している(当社では過年度のおいて有価証券の減損処理は行っていないものとする)。

銘柄 取得原価 決算時の時価
C社株式 1,000,000円 1,300,000円
D社株式 800,000円 740,000円

(計算過程)
C社株式:時価1,300,000円-取得原価1,000,000円=300,000円(評価益)
D社株式:時価740,000円-取得原価800,000円=△60,000円(評価損)

(仕訳-C社株式の評価)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 300,000 その他有価証券評価損 300,000
(仕訳-D社株式の評価)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券評価損 60,000 投資有価証券 60,000

部分純資産直入法を採用している場合、評価益が生じた銘柄の評価差額は『その他有価証券評価差額金』(純資産)として処理し、評価損が生じた銘柄の評価差額は『投資有価証券評価損』(営業外損失)として処理することになります。

2.×2年度期首におけるC社株式・D社株式の評価について必要な仕訳を示しなさい。

(仕訳-C社株式の評価)
借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価差額金 300,000 投資有価証券 30,000
(仕訳-D社株式の評価)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 60,000 投資有価証券評価損 60,000

その他有価証券の評価差額は洗い替え法を適用しますので、翌期の期首に振り戻し仕訳をおこないます。したがってその他有価証券の帳簿価額は取得原価と等しくなります。

(関連ページ)
有価証券の分類(金融商品会計基準)
売買目的有価証券の評価(切放し法)の仕訳・記帳
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